こんにちは。
今日はいつもの修理事例紹介ではなく、靴の底付けから考えるスタイル別の特徴のお話をしたいと思います。
スタイル別の特徴?
それだけではピンと来ないと思いますのでまずはこちらを御覧ください。
レッドウィングのベックマンとハノーヴァーのLBシェパードです。
どちらもアメリカの匂いプンプンのペアではありますが、決定的に異なる部分があります。
もちろんブーツと短靴であり、デザインも木型もなにもかも違うのですが。
ずばり「ウェルト」の部分に差があるのです。
ウェルトとは靴底を縫うにあたって媒介となる細革のことです。
見た目で言うとソールのコバ上面側のことです。
「ダシ縫い」と呼ばれる縫い目が見えるのでお手持ちの靴でご確認ください。
そして本題。
画像の靴はどちらもグッドイヤー製法という作り方をされており、ソールにはダシ縫いがかかっているのですが
ウェルトに注目して頂くと踵部分から違いがあるのがおわかりになるでしょうか。
画像奥側のレッドウイングはダシ縫いが土踏まずを過ぎたあたりで終わっています。
画像手前のハノーヴァーはダシ縫いが踵部分もグルっと一回りかかっています。
巷では360°ウェルトなど呼ばれていますが、
我々は前者を「シングルウェルト」
後者を「ダブルウェルト」
と呼んでいます。
どちらが良い悪いではなくそれぞれのメリットがあります。
それをお話する前に再び画像をご覧ください。
画像一枚目はシングルウェルトの靴を底面側から撮影したもの。
画像二枚目はダブルウェルトの靴を底面側から撮影したもの。
ボンドを塗っている部分にヒールの積上を取り付けていくのですが、シングルの場合は釘で靴底を留めます。
ダブルはそのまま全体を縫っていますので釘無しです。
シングルウェルトは踵まわりに縫いをかけませんのでウェルトの制限を受けず、かなりタイトなコバシルエットにすることができます。
しかし中底に釘を打つと若干重量が増し、中底に金属腐食のリスクが生まれます。
ダブルウェルトは釘を使いませんのでシングルウェルトのデメリットを解決できますが、踵まわりにも縫い代を残さねばならず
ヒールのシルエットを絞りにくくなります。
しかし言い方を変えればコバ幅がある分バンパーとしての役割を果たし傷から守ってくれます。
ざっくり言えば
シングルウェルトの靴はスマートなドレス靴向き。
ダブルウェルトはがっしりしたダブルソールやブーツ向きといったところです。
それぞれの特徴を理解すれば、その靴の持つデザインにも根拠があるのだなア。と感じてもらえるのではないでしょうか。
YUMA.
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