
こんにちは。
定期的にラスト(靴雑誌)を読み返しています。
特に古いものは内容が濃くて、
当時の靴工場の風景や、リリースされていた製品仕様なんかを
確認するのに便利です。
毎号数ページは修理や色補正について書いてあったりするのですが紳士靴ばかり。
紳士靴雑誌ですからあたりきです。
婦人靴(特にパンプス系)はなかなか出てきません。
そこで今回は靴修理の基本、ピンヒール交換についてお話します。
そもそもピンヒールとはヒール付き婦人靴の中でも
「パイプが内蔵されているごく細いもの」のことを指します。
ヒール付き婦人靴といっても太めのものもあり、それらは板状のゴムを接着してから釘を打って固定します(非ピンヒール)。
対してピンヒールはヒール内部を貫くパイプにピンリフトを直接ぶっ刺して固定するので接着剤も不要です。
ピンリフトとはこちら。
ペグのような芯棒に強化ゴムがくっついています。
これをヒールパイプに打ち込んで、ヒール外径に合わせて削ったら終了です。
ものの数分で完成するのでイージーだと思われがちですが、
綺麗に直せるようになるまで試練の連続なのがこのピンヒール修理。
新人時代には辛酸を舐めまくった同業さんも多いのではないでしょうか?
ピンヒールあるあるは修理屋同士の飲み会でも絶対盛り上がるやつです。
とまあ、前置きが長くなりましたが実際に直していきましょう。
まずは状態チェック!

ゴムが摩耗しきった状態でなお歩き続けるとこのようにヒール本体が削れていきます。
すると通常ニッパーで引き抜くはずの芯棒が抜けません。
時間との勝負であるクイック系の店舗では芯棒をパイプの奥に追い込んで新たなピンヒールをつけたりしますが、そうすると内部に古い芯棒が詰まり、不具合の原因になる可能性もあります。(たとえ芯棒が打ち込んであっても時間をかければ除去できるのでご安心を)
そこで今回は抜けない芯棒をちゃんと抜いて修理する方法を紹介します。
①画像の状態を断面図にしてみました。

②芯棒をニッパーで引き抜くために掴み代を作っていきます。
※芯棒だけ露出させた状態↑
③ニッパーで芯棒を引き抜き、ガタついたヒールをピッタリ水平に調整します。(新人の頃はこの水平がなかなか出せなくて苦労しました。)
※ニッパーで芯棒を引き抜いた状態↑このあと水平に加工
④新たなピンリフトを差し込み、成形したら完成!


いかがでしょうか。
できるかぎりわかりやすく書いたつもりですがわりかし長くなってしまいました。
「芯棒を残してパイプだけを削るつもりが、芯棒も一緒に削れちゃう」なんて失敗を繰り返しながらも反復練習のおかげでいつしかできるようになり。
スポッと抜けた時の快感は新人の頃から変わらず良いモノです。
YUMA.
※今回のように削れがひどい場合は通常のピンヒール交換代に別途ヒールカット代がかかる場合がございます。
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